書 名 | 野村英夫 |
作 者 | 猿渡重達 |
出版社 | 沖積舎 |
シリーズ | - |
【抄・序】 |
【目次】 |
【本文】 |
p28 祈 祷 神様、若し私が、 静かな影と明るい歌とを 二つとも知ってをります優しい少女を、 恋してしまひましたなら、 私は本当に愛されるで御座ゐませうか。 優しい少女が静かな瞳で、 私を見て呉れます時に、 私は愛されてゐるやうに感じます。 だのに金色な芝草の上で その少女が明るい歌を唱ひます時、 私はもう飛べなくなった蝶の様に、 微笑んだ少女の瞳から、 見捨てられてしまふ様に感じます。 私がそんな優しい少女や弟たちと、 食卓についてをります時、 たった一つの小さな幸せは私の心に宿ります。 神様、若し私の日日が、 どのやうに冷たい涙で満たされませうとも、 私が唯一人静かに暮せまして、 少女の心がいつまでも、私の悲しみと優しさのために、 明るい幸せに包まれてをります様に。 |
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【類本】 |