書 名 | 人間と労働の未来 |
作 者 | 中岡哲郎 |
出版社 | 中央公論社 |
シリーズ | 中公新書-0234 |
【抄・序】 |
【目次】 |
【本文】 |
p137 倒錯した人間主義 この百年の間に、労働は完全に変わってしまった。『経哲草稿』でマルクスが、疎外された労働の極致として描きだしたものが、労働の常態となった。他人の定めた秩序の下で行なう労働。人と人とのつながりから切断さればらばらにされた職場での意識。何よりも労働は賃金を獲得するための手段であると考える考え方。それらはいずれもマルクスが、疎外された労働の極致として描きだしていたものだ。だが、今日ではそれらはあまりにも一般化しすぎていて、それを労働の異常な姿とみとめるほうが困難である。今日、常識的な考察から出発してそこへマルクスの「全面発達」を接木しようとしたりする人々がしばしばおちいる混乱や、労働に関する不満をとりあげることより大幅賃上げの方が革命的だと考える活動家の考え方などは、このへんの見落としからきている。 問わなければならないことは、労働の領域から失われてしまったものを人間はとりもどすことができるのかどうかということなのだ。労働はもう一度対象との格闘となりうるのかどうか。その体験を通じて人間が学び成長すること、その活動をとおして多くの人間との関係をとり結ぶことを可能にすることができるのかどうか。労働者が工程へ従属するのではなく労働者が工程の主人となりうるのかどうか。外化されたものの総体を百年前へ逆もどりさせるのではなしに、それらの課題を実現することは果たして可能か、もし可能ならば、それはどのようにして実現されるのかを問うことなのだ。 |
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