書 名 | 転向研究 |
作 者 | 鶴見俊輔 |
出版社 | 筑摩書房 |
シリーズ | 筑摩叢書-233 |
【抄・序】 |
【目次】 |
【本文】 |
p383 埴谷がマルクス主義の借り着をぬぎ、しかも日本国家のきせようとする思想的借り着を着ないという仕方ではだかの自己とむきあったのに対して、吉本はまず日本国家のお仕着せの思想・日本民族の思想をぬぎ、次に進歩陣営のすすめたマルクス主義の借り着をきないという仕方ではだかの自己とむきあったことにある。両者のちがいにとって決定的なものとなるのは、歴史的状況のちがいである。「生まれた時にはもう遅かった。」そういう吉本の感じ方は、革命運動の指導部にあって敗北した埴谷とは違う自己意識である。1945年(昭和二十年)は重大な可能性をはらんだ状況であった。この時をのがしたことが生涯にわたる悔恨となる。敗戦を準備し、敗戦を革命に転じることができなかった日本国民は、戦後にも自立することはできないのではないか。記憶と予感のこの複合は、吉本の思想を支える動かしにくい一点となる。 |
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【類本】 |