書 名 | 第二の世界 |
作 者 | オーデン(W.H)/中桐雅夫訳 |
出版社 | 晶文社 |
シリーズ | 晶文選書-21 |
【抄・序】 |
【目次】 |
p7…序 p11…1.劇の主人公としての殉教者 p61…2.北欧伝説(サガ)の世界 p114…3.オペラの世界 p152…4.人間のことばと神のことば p188…訳注 p190…オーデン・小ゲーテの一面(中桐雅夫) |
【本文】 |
p61 あらゆる人間には、ふたつの欲望がある。第一の世界(プライマリー・ワールド)、すなわちわれわれが生まれ、暮らし、愛し、憎しみ、そして死んでいく、われわれ自身の外側の与えられた世界についての真実を知りたいという欲望がまずある。つぎに、われわれ自身の新しい第二の世界(セカンダリー・ワールド)を作りたい、もし自分でそれを作れないなら、作ることのできる人々の第二の世界に参加したいという欲望である。 (原注 第一、第二の世界という術語については、妖精物語に関するJ.R.R.トルキーン教授の論文に負うところがある) p159 代名詞ユーとアイを、単なる習慣としてでなく、意識していっているときには、感情が特徴的に口調にあらわれる。 ユーという感情は、なになにのためだと考える−−責任の−−感情だ。青年が娘に「きみは美しい」という、しかも本気でいっているとき、彼女がすくなくとも部分的には、その肉体的外見の責任者であると主張しているのである。それは単に遺伝子の幸運な結合の結果ではないのだ。ある男が、危害を加えた人物に対して「きみを許す」といえば、その人物が気違いでも、ものでもなく、自分のやることを承知しており、だれに対してやるのかをも知っている人間だということを主張しているのである。 同様に、アイという感情も、なにかの責任を引き受ける感情である。わたしはきみを愛するということは、その気持ちの原因や起源はなんであろうと、自分がその責任を負う、自分は受身で無力な、情熱の犠牲者ではないということをいっているのである。アイとユーの双方に共通している感情は、記憶すべき人格的な過去と、造るべき人格的な未来をもつある物語の真ん中にあるという感情だ。 |
【後記・他・関連書】 |
【類本】 |