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書 名(地獄の歌)火の聖女
作 者森英介
出版社北洋社
シリーズ-

memo
【抄・序】


【目次】


【本文】
p665
「工場」

石になりたいと
くさむらの

かたなきいしぶみだきしめし
夏のひの とおく

あの雲をつきやぶり
蒼穹の きたの みなみの

海にいでんと
ねがひし秋の

いまは
とほく

枯えだの
うれし柿のみ

鴉の
きたりついばむをまち

わがために慟哭し
骨ひろひくれるひとはなく

いまは
うしなはれし

うたの
骨みずからひろひ

墓 たてむねがひすら
ゆめとなり

とつぷりとくれるまで
乏しきに 肉身を 縛りつけ

とらはれの
活字かへしにひねもすもだし

むしろ
寒月の あかるき森の 落葉ふみ

昏々たる
眠りにつかんとねがひしひ

このまちで
高村光太郎先生とおあひしました

「ミケランンジエロは
 ぼくたちの見方だとおもふのです!

さういつて
えんだんから朗讀なさつたとき

ゆふやみのなかで
たしか 泣いてをられました

荒寥たる歸宅!
えいゑんの 荒寥たる歸宅!

「あのひとゝごいつしよですか!
「いえ、

「原稿は
「まだ、

わたくし
ひとりでいんさつこうばではたらいてゐます

そのほかに、
何がいへませう!

たゞ
この冬を

何んとかして
越さうとおもつてゐるばかりなのです

さうして
あゝ

聲をあげて
おいのりしてゐるだけなのです!

もえ
つきて

ひえゆくものゝ
うつくしく

なんにも
なくなってしまつたわたくしも

ひとり死ぬる
をののきなく

マリアさまと
ごいつしよだつたとあんしんして

あの
ロザリオを

てにしたまゝ
ねむるやうになりました!

わが骨 わなゝきふるふ
詩篇六ノ二
1950・11・24

【後記・他・関連書】


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