書 名 | 禁治産 |
作 者 | バルザック/加藤美雄 訳 |
出版社 | 大翠書院 |
シリーズ | - |
【抄・序】 |
【目次】 |
【本文】 |
p297 バルザック小説のもつ神秘、すなはち、バルザック自身が次の言葉で言ひあらはしてゐる意味における神秘は、つねにわれわれの課題として残されてゐる。『自分は人から理解されたことあると、誰が自惚れられようか。われわれはみんな識られぬままに死んで行くのだ。』とバルザックは事の序でに言つてゐる。(クルテイウス「バルザック」) p299 バルザックは好んで精神的破局に直面した人間を描く、その人間の環境と、人物の環境の描写を試みる。しかし「バルザックは何人の真似をしたわけでもない。彼以前の人間を真似ようなんて考へても見なかった。」とアランが言つてゐるやうに、バルザックの書いたものはすべてが彼の体験と想像力から発している。だから彼はすべてを自己の判断によって決することをモットーとした。 ridendo castigare mores (笑いをもつて風俗を正す。) ことを自己の創作にも要求したのだ。彼の悲劇が直ちに笑いに通ずることは、その作品の深さと、複雑さを示している。 |
【後記・他・関連書】 |
【類本】 |