書 名 | 実存の誘惑 |
作 者 | シオラン(E.M)/篠田和基訳 |
出版社 | 国文社 |
シリーズ | シオラン選集-3- |
【抄・序】 |
【目次】 |
p7…自己に反する思考 p27…息切れのした文明 p53…運命についての小論 p65…亡命の利点 p71…ある孤独者の集団 p111…行きづまりの状況についての手紙 p137…冒険としての文体 p151…小説のかなたに p171…神秘家の営み p190…怒りとあきらめ p247…実存の誘惑 p270…訳者あとがき |
【本文】 |
p18 われわれは知恵の退廃した形に身を捧げ、時間の経過を気に病み、魅惑的であると同時にぞっとするような、この不具性と戦い、時と闘っている。 p69 根無し草(デラシネ)の詩人にはひとつの危険が待ちかまえている。運命に適応してしまって、もはや苦しむより、それを楽しんでしまうことだ。 p87 自己の深みまで追いつめられ、それを恐れ、彼らは埒もない会話にしがみついて、それを避け、逃れようとする。 p118 われわれの美的な幻影に力を回復させるには、幾世紀かの苦行があきらかに必要だ。無言の行、非文学の時代。目下のところはあらゆるジャンルを腐敗させ、それを否定する極限まで追いつめ、見事できあがっているものを解体しなければならない。 p213 皮肉がユーモアの度をませば、絶対そのものである、この〈時間の外の〉未来から、われわれは永遠にしめだされてしまう。 p243 どんな才能もないということは、なんという特典、なんという自由だろう!あらゆるものが与えられている。すべてのものが自分のものになる。空間を支配して、ひとつの対象から別の対象に、ひとつの世界から別の世界に自由に飛び移る。世界は足もとにある。幸福の本質に一挙に達する。存在の零点における興奮。置き換えられた生。息吹の状態、呼吸する永遠、いかなる神秘の重みも受けない永遠の状態に入った生。 p269 無は、おそらくずっとたやすいものだった。存在の中に〈溶けこむ〉ことは、なんと苦しいことなのだろう。 (完) |
【後記・他・関連書】 |
【類本】 |