書 名 | 今日の世界は演劇によって再現できるか(ブレヒト演劇論集) |
作 者 | ブレヒト/千田是也訳編 |
出版社 | 白水社 |
シリーズ | - |
【抄・序】 |
【目次】 |
p10…1.民衆性とリアリズム p66…2.叙事詩的演劇 p140…3.俳優術の新しい技法 p216…4.叙事詩的演劇の上演 p261…5.演劇のための小思考原理 p298…6.演劇における弁証法 p369…あとがき |
【本文】 |
p298 新しいものと古いものをさがせ 君らが役を読むときは 研究しながら、びっくりする覚悟で 新しいものと古いものをさがせ。私たちと 私たちの子供たちの時代は、新しいものが 古いものとたたかっている時代だ。 重すぎる荷物のように、教師に知識を 肩がわりしてやる年とった労働婦人の あの計略は新しい。だからこれは 新しいものとして現わさねばならぬ。 知識を盛ったビラを戦争中の労働者が 受け取るのをこわがるのは古い。それは 古いものとして現さねばならぬ。だが 人民がいうように。月がかわるときには 若い月が、ひと晩じゅう、古い月を 抱いている。こわがる者のためらいは 新しい時代を予告する。いつでも 《まだ》と《もう》とをつけくわえろ。 階級間のたたかいは 古いものと新しいものとのたたかいは 個人のなかでも吹き荒れている。 教えようとする教師の気がまえは 弟には見えなくても、他人には よく見える。 自分の役の心の動きと行動をさがせ−− 新しいものと古いものをもとめて。 女商人の肝っ玉おっ母の望みは 子どもたちを殺す。唖娘の 戦争への疑いは新しいものの ひとつだ。絶望的なかの女の動きが 救いの太鼓を屋根に引きあげるとき この偉大な救い手は君たちの心を 誇りでみたすが、なにも学ばぬ 元気な女商人のよびおこすのはあわれみだ。 君たちの役を読みながら 研究しながら、びっくりする覚悟で 新しいものを喜び、古いものを恥じろ。 |
【後記・他・関連書】 |
【類本】 |