書 名 | バルザックとフランス・リアリズム |
作 者 | ルカーチ(G)/男沢淳・針生一郎訳 |
出版社 | 岩波書店 |
シリーズ | 時代の窓 |
【抄・序】 |
【目次】 |
p1…序文(1951年ブタペスト) p21…「農民」 p67…「幻滅」 p99…スタンダールの批評家としてのバルザック p137…ゾラの生誕百年祭にあたって p159…訳者ノート p176…G.ルカーチ著作目録 p181…ルカーチ関係邦文雑誌論文目録 索引 |
【本文】 |
序文 p3 最近五十年の歴史観は、人類の統一的上昇運動の科学を否定する点に、その世界観上の本質があるが、マルクス主義とこれとの対立は、美学のあらゆる問題についても、するどい、客観的な対立をなしている。 p5 バルザックと世紀中葉および世紀末のフランス小説との、歴史的に把握された対立を、純美学的な言葉に翻訳すると、リアリズムと自然主義の対立ということになる。 p7 しかし大部分の近代美術は、フレンホーフェルのたたかいさえ断念し、新しい美学理論を借りてじぶんの気分の混乱を正当化することで満足している。 p103 バルザックは一面においては、スタンダールが芸術的細目の点では浪漫主義にも、又バルザックの代表する傾向にも何ら譲歩しないということを非常によく理解している。しかし他面においては彼は構成という最後の問題、すなわちすでに直接に世界観とふれあうような問題になると、まさにこの譲歩しないということのためにスタンダールを批判しているのである。 p112 彼(バルザック)は空間的、時間的に著しく集中された何らかの破局を、或はひとかたまりの破局を描き、この像に強く統一的な魔力的気分を与える。このようなやり方で、彼はシェイクスピアの戯曲やまた古典の短編小説の一定の構成形式を長篇小説の形式に利用しながら、近代のブルジョア生活の霧散するような無形式性を芸術的に防禦しようとしている。この構成形式はその結果どうしても、一群の人物たちの命をこのような小説の中で全うさせるできないのである。 p123 バルザックとスタンダールとの間の深い対立は次の点に基づいている。すなわち、バルザックの世界観はこれら全ての潮流の中心にあって、それらすべてと接触し、動揺させられたのに対して、スタンダールの世界観は、本質的には革命前の啓蒙主義的イデオロギーの徹底的な、また興味ある延長だったのである。 |
【後記・他・関連書】 |
【類本】 |